トライボロジー入門九州講座に参加して

茨城大学大学院理工学研究科システム工学専攻 辻本孝則



  9月25日に佐賀県で開催されたトライボロジー入門九州講座「トライボロジーの基礎と応用」に参加しました.現在,大学で微粒子ピーニング処理を用いたDLC成膜材の摩擦係数制御に関する研究を行っております.研究を進めていくにあたり数多くのトライボロジーに関わる問題が出てきており,もう一度初心に帰りトライボロジーの基礎を学びたいとの思いで参加の申し込みをしました.講演内容は,トライボロジー全体に関することから流体潤滑の基礎や摩擦・摩耗の評価試験方法について,そして転がり軸受と自動車のトライボロジーに関する応用技術についてというトライボロジーの基礎から応用まで一日で学べる贅沢な内容でした.講演内容もさることながら,講師の方々もトライボロジーの分野の第一線でご活躍されている先生方で大学にいるだけでは決して学ぶことができない大変貴重な講座となりました.
 講演は,まず九州大学名誉教授の山本雄二先生から「トライボロジー概論」と題してトライボロジーの定義から学問分野におけるトライボロジーの位置付け,トライボロジー研究のあり方,トライボロジストとしての考え方と願望について解説されました.特に印象に残った内容はトライボロジー研究のあり方でした.トライボロジーの研究は,@自分の目で現象を把握する,A広範な関連分野の基礎知識を身に付ける,B先入観のない思考で考える,そして疑問を持ったり迷ったらまず実行することが大切であることを学びました.これらのことは,これから研究を行っていく中で基礎となる考え方であると同時に常に頭の中に置きながら研究を進めていかなければならないと感じました.
 九州工業大学の兼田骰G先生からは,流体潤滑について流体潤滑の目的やストライベック曲線,レイノルズ方程式について具体例を出しながらわかり易く解説して頂きました.流体潤滑について全くの初心者である私でも流体潤滑のイメージを付けることができた講演でした.出光興産株式会社の市橋俊彦先生からは,潤滑剤についてと主に摩擦・摩耗試験方法について解説されました.
 摩擦・摩耗試験では,どんな表面のオーダーでの問題かの認識が大切であることと接触の形態は何なのか,どのくらい接触していてどこが接触しているのか,表面の粗さはどうなのかを考える必要があることを改めて学びました.また,すべり軸受を例に実機に対応した試験法を選択するには潤滑状態を合わせることが第一歩であることを解説して頂き,試験する際にはまず潤滑状態を考えて評価試験しなければ意味がないため今後試験を行っていく上で注意が必要であると感じました.
 トライボロジーの応用技術として,株式会社ジェイテクトの戸田一寿先生からは,転がり軸受についてと転がり接触面性状の重要性,転がり軸受の寿命についての解説後,ディファレンシャル用軸受の熱処理技術と形状変更に伴う高性能化の取り組みを解説して頂きました.
 また,トヨタ自動車株式会社の鈴木厚先生からは,1980年代から現在まで年代別に自動車のトライボロジー課題と技術について,それからエンジンおよびトランスミッションのトライボロジー技術,コーティングのトライボロジー技術について解説して頂き,トライボロジーと実製品との関わりを知ると同時にしゅう動する部品の高性能化にはトライボロジーは欠かせない学問であると感じました.いずれの講演も学ぶことが大変多く,講師の方々の一言一言が新鮮で聞きもらしたらもったいないという気持ちで受講させて頂きました.
また,テキストも大変わかり易く内容も充実しており大変参考になるテキストでした.
 今回のトライボロジー入門九州講座で数多くのトライボロジーに関する大切なことに気づかされ,多くのことを学べた貴重な場となりました.この経験を活かして良きトライボロジストを目指して一歩一歩努力していこうと思います.
 最後に,講師の先生方をはじめ,ご多忙の中、企画準備をして頂いた事務局実行委員の皆様に厚く御礼申し上げます.
受講風景