「トライボロジー会議 2001 秋 宇都宮」
大会報告



「トライボロジー会議2001秋宇都宮」を終えて



実行委員長 鏡 重次郎 
(宇都宮大学工学部) 
 「トライボロジー会議2001秋宇都宮」は平成13年11月6日(火)〜8日(木)の3日間,宇都宮市にある栃木県総合文化センターで開催された. また,9日(金)には見学会が行なわれた.
 トライボロジー会議秋は,例年東京から比較的遠く離れた場所で開催されていたのが通例であった. 東京へは通勤圏となっている宇都宮での開催に,どれだけの参加者があるか心配しながら,しかしながらたくさんの参加者があることを期待しながら,約2年がかりで開催にこぎつけた.会場となった栃木県総合文化センター周辺のイチョウの葉も色づき,参加者各位には宇都宮市の落ち着いた街並を感じてもらえたのではないかと想像している.予想を上回って参加者は約550名を数えた.収容人数の少ない講演会場もあったが,全体的には研究発表,討論も活発に行なわれたものと思われる.会場案内
 会議開催に当たっては県内外の多くの団体,機関からご協力をいただいた.特に栃木県内においては,栃木県,宇都宮市,栃木県商工会議所連合会,宇都宮商工会議所,宇都宮大学工学部から後援を賜った.また,県内各商工会議所,宇都宮観光コンベンション協会からも多くのご協力をいただいた.謹んで御礼を申し上げます.以下,各催しについては担当委員から報告をしていただいた.
                                  会議場案内

研究発表会(田中章浩委員)
 研究発表会は,3日間にわたり,5つの会議室など(3日目のみ4室)を使用して行なわれました.研究発表の総数は,シンポジウムセッションでの基調講演を含めて227件でした.シンポジウムセッションとしては,(1)精密加工のトライボロジーと省資源,省エネ,環境対策(発表数18件),(2)マイクロマシンとトライボロジー(発表数11件),(3)環境とトライボロジー(発表数16件),(4)医療福祉機器のトライボロジー(発表数11件)の4つのテーマが取り上げられ,それぞれ発表内容に関連した活発な討論が行なわれました.一般の研究発表は,38件のセッションに分かれて行なわれました.具体的には,(1)表面・接触:2件(発表数8件),(2)摩擦摩耗:6件(発表数26件),(3)流体潤滑:4件(発表数19件),(4)トライボケミストリ:1件(発表数6件),(5)潤滑油:2件(発表数9件),(6)グリース:2件(発表数8件), (7)固体潤滑:1件(発表数6件),(8)摩擦材料:4件(発表数18件),(9)コーティング:2件(発表数8件),(10)表面改質:1件(発表数5件),(11)転がり接触:2件(発表数9件),(12)機械要素:3件(発表数14件),(13)磁気記録:2件(発表数8件),(14)マイクロトライボロジー:3件(発表数14件),(15)バイオトライボロジー:1件(発表数5件),(16)特殊環境:2件(発表数8件)でした.複数のセッションで立ち見の聴講者が出る程で,参加の方々の関心の高さが強く感じられました.
研究発表会の一場面
研究発表会の一場面

イブニングフォーラム(原田正躬委員)
 イブニングフォーラムは,トライボロジー夜話「トライボロジーと振動」と題して,五つの話題が提供された.第一話「振動とトライボロジーにまつわる話」では,バイオリンの弦と弓とのあいだに生じるstick slipを始め,加工におけるびびりやチャターマーク,鉄道レールに生じる波状摩耗現象などの自励現象のメカニズムが紹介され,それらの解明には現象のモデル化が重要であると結び,第二話「ER流体と振動制御にまつわる話」では,食用油に小麦粉やコーンスターチを混ぜて作ったER流体の歴史から説き起こし,ER流体を制御系と組み合わせることによって,学習機能を持った振動制御系を実現しようとする話などがあった.第三話「ブレーキと振動にまつわる話」では,ローマ時代の戦闘二輪車の木製摩擦材から始まり,ブレーキ鳴き・異音の周波数分析や移着状態の観察結果などが紹介され,ブレーキの音・振動の解明には,摩擦表面で起きている事象の把握が必要であるとの見解が述べられ,第四話「フレッチング条件下の異常音にまつわる話」では,フレッチングにおける異常音の発声時における摩擦挙動の特色,接触部の状態・潤滑との関係などについての興味ある話題が異常音の収録結果とともに提供された.最後に,第五話「レコードの音色にまつわる話」では,一転して,感性に関わるレコードの音と摩擦の話になり,SPレコードの名盤をCDに復刻することにまつわる話やレコードや針の材質およびチリの影響など,実際に復刻した名盤を聞きながらの聴講になった.およそ2時間30分,変化のあるフォーラムであったとの参加者からの声も耳にした.
イブニングフォーラム
イブニングフォーラムの一場面

歓迎式典並びに特別講演会(林直義委員)
【歓迎式典】
 鏡実行委員長および吹田学会長より,開催に至るまでの地元の地方公共団体,学校,企業および各学会などからの後援・協賛へのお礼と,盛大に開催できた事への感謝が述べられました.
歓迎式典 (会長挨拶)
歓迎式典 (会長挨拶)

【特別講演会】
 歓迎式典終了後,引き続き「F1とトライボロジー」と題して特別講演会が行なわれました.講演者の保坂武文氏は竃{田技術研究所でF1チームを統括してこられた方で,F1とは何か?から経済面,興行面と開発現場でのでき事まで幅広くお話をいただきました.レギュレーションが安全面を考慮し,接地抵抗を低減する方向へゆくのに対して技術が常に追いついてくるという実態を伺ったのが印象的でした.2階席まで埋めた約三百名の方々も最後まで興味を持って楽しんでいました.
特別講演会関連資料展示 (F1マシン)
特別講演会関連資料展示 (F1マシン)

トライボコンテスト(三宅正二郎委員)
 トライボコンテストとしてトライボアートコンテストとトライボフィクションコンテストを企画した.アートコンテストはテーマを「摩訶不思議なトライボロジーの世界」としてトライボロジーで巡り会う「摩訶不思議な現象」の驚き,感慨を芸術の域まで高めてみませんか?というキャッチフレーズで進めた.展示形式として表現の手段,メディアを従来より拡大し,トライボロジーに関する @写真,グラフィックス,A動画,Bデモンストレーション,C言葉(川柳・格言・怪談など)およびそれらに類する作品を募集した.その結果,写真12件,動画3件の合計15件もの応募があった.一方,トライボフィクションコンテストはテーマとして「21世紀の夢,空想」として科学技術開発の指針となるような未来技術に対する夢,空想を募集した.しかし,応募者ゼロという結果になった.トライボロジーには夢も希望もないのか?と慨嘆する方もおられたが,夢があるかどうかはさておきトライボロジストには夢想家よりも芸術家が多いのでは?と推察される結果となった.コンテストの審査は会議参加者の自由投票により行ない,展示場所も良かったせいか300件程度の投票があった.第一位は「コビトになって摩耗の世界をめぐろう」,第二位は「見てますか?研究の夢」,第三位は同点で「アイクル君」と「水の宝石」が選ばれた.優秀作品を懇親会において表彰し,賞状と賞品の宇都宮特選餃子が贈られた.応募された全作品は「トライボロジスト」第47巻1号の巻頭ページおよびこちらに紹介されている.
トライボアートコンテスト
トライボアートコンテスト

懇親会(畑沢鉄三委員)
 研究発表会の次に期待をされているのが懇親会と想像する.会議2日目11月7日(水)18:00より,宇都宮東武ホテルグランデ4階大宴会場「松柏」で盛大に開催された.前半を水本宗男実行委員の司会で,田中章浩副実行委員長,吹田圭弘学会長の挨拶に続き,来賓の西田靖宇都宮大学工学部長から歓迎の挨拶をいただいた.木村,西村名誉会員の挨拶の後,山田國男元宇都宮大学教授,前帝京大学教授に乾杯のご発声をいただき,ご期待の歓談がスタートした.ジャズ演奏と共に栃木の餃子,銘酒などにご満足をいただけたでしょうか.宴中ほどには,恒例となったトライボコンテストの表彰が行なわれた.後半は畑沢鉄三事務局長の司会で,歓談を続けながらジャズバンド「クレストファイブ」のステージに耳を傾けていただいた.最後に,トライボロジー会議2002秋仙台について,堀切川一男教授(加藤康司実行委員長代理)から挨拶と紹介があり,続いて古澤利明実行委員の音頭でお開きとなった.
懇親会
懇親会

見学会(長島隆委員)
 最終日に「伝統の益子焼と最新技術のツインリンクもてぎ」と題して,参加者20名で見学会を開催しました.午前中は古い面影の残る益子町の陶器街でお土産品を購入するなど,自由に散策いただきました.
 午後からは小雨のぱらつく中,日本有数の本格的サーキット「ツインリンクもてぎ」に移動し,グランドスタンドのスイートルームで広大なオーバルコースを眺めながら昼食,フォーミュラーカーのテスト走行が見られるなど,うれしいハプニングもありました.その後,コレクションホール〜HONDAファンファンラボなどの施設を見学しました.特にコレクションホールでは歴代のF1実車を見つつ,前日行なわれた特別講演会の内容を肌で感じることができたと思います.
 また,有志で参加した低μ路での安全運転体験走行など自身で体感できるアトラクションも好評でした.(体験者の声:低μ路走行,後輪スピンの体験,NSXの乗車と,息をつく間もない大興奮の一時間でした.)
 最後に二足歩行ロボットの前で集合写真を撮り,栃木〜宇都宮での思い出としました.
見学会 (益子,ツインリンクもてぎ)
見学会 (益子,ツインリンクもてぎ)

製品・カタログ展示(水本宗男委員)
 応募企業100社を目標にして,実行委員会結成後 比較的早めに活動を開始し,募集案内を栃木県外約350社,県内約100社に送付しました.また担当委員には地道な依頼活動をしていただき,最終的に製品・カタログ展示37社,特別賛助会員9社,広告18社,合計64社からご支援とご協力をいただくことができました.
 今回の展示では,応募いただいた企業に,カタログだけでなく,製品・モデル・パネル等も積極的に展示していただくようにお願いしました.展示会場が受付・コンテストの会場と同じであったことも幸いし,大勢の方に楽しく展示品を見ていただけたものと思います.
 北関東での開催ということで,茨城,群馬,埼玉,栃木各県内の企業に強く応募をお願いをしましたが,とくに栃木県内においては,実行委員長を中心とする事務局(宇都宮大学)から,県内全市の商工会義所にも働きかけ,会議所からの応募呼びかけの協力もいただきました.説明に伺ったときは必ず「トライボロジーって何ですか?」と問われたようですが,今回の会議で,「トライボロジー」も上記4県に多少知れわたったのではないかと思います.この機会を,トライボロジー学会と北関東地域との今後の連携活動促進の足がかりにしたいと考えております.
製品・カタログ展示
製品・カタログ展示

最後に
 大会を通して,多くの参加者から好評をいただいておりますが,おもに実行委員の方から,「講演会場が狭くて,立って参加された方も多かった」,「一部の発表会場で出入り口が前方に一箇所しかなく,出入りしにくかった」,さらに「見学会は内容が良かったのに,予想より参加者が少なかった」などの声もあり,今後の反省・検討課題としたい.
 さらに,今回の会議開催に際して寄せられたご意見には,今後少し時間をかけて検討しなければならない次のようなものもある.すなわち,「北関東4県で40名に及ぶ実行委員会の組織を,今後とも活用できるようなことが考えられないか」,「会議開催マニュアルを整理してまとめ,学会事務局に保管して引き継ぎ利用が便利なようにできないか」,「学生会員の発表会を設けて優秀プレゼンテーション賞を与えるなど,若者会員をもっと引きつける会議開催にできないか」,さらに「ポスター等による広告活動をより活発化し,学会や会議開催の存在をもっとアピールできないか」などである.
 今大会について多くの参加者からご意見が届くには未だ時間がかかるとは思いますが,上述のようなご意見も含めて,これらを真摯に受け止めて検討し,今後の本学会活動の活性化に役立てることができれば,実行委員会としても望外の喜びです.
 最後に,今回の会議開催にご支援いただいた本学会内外の多くの方々に重ねて御礼申し上げ,結びとします.

実行委員



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