会長メッセージ
一般社団法人日本トライボロジー学会 第71期会長
佐々木 信也
このたび,第71期日本トライボロジー学会会長を拝命いたしました,東京理科大学の佐々木信也です.第70期に引き続き本学会の運営を担うこととなり,その責任の重さを改めて感じております.微力ではございますが,本学会のさらなる発展と次世代への継承のために尽力してまいりますので,会員の皆様のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます.
本学会は昨年,1956年の日本潤滑学会創設以来,創立70周年という大きな節目を迎えました.この70年の歩みの中で,本学会は国内外の研究者・技術者の皆様に支えられながら,トライボロジーの発展を通じて学術研究の進展と産業技術の革新に大きく貢献してまいりました.摩擦,摩耗,潤滑という普遍的な課題に取り組み続ける中で,多くの優れた研究成果と技術開発が生み出され,日本のものづくりを支える重要な学術基盤としての役割を果たしてきました.今日の学会の発展は,歴代会長,理事,事務局,そして会員の皆様の不断の努力の賜物であり,ここに深く敬意と感謝を表します.
トライボロジーは,物理学,化学,材料科学を基盤としながら,機械,エレクトロニクス,エネルギー,社会インフラ,さらにはバイオメディカル分野にまで広がる学際的な研究領域です.近年は,ナノテクノロジーや高度な計測・解析技術の進展によって,摩擦・摩耗・潤滑現象の理解が原子・分子レベルにまで深化し,新しい機能材料や表面設計技術の創出へとつながっています.また,データサイエンスや人工知能(AI)の活用が進むことで,従来の経験や試行錯誤に依存していた研究開発手法も大きく変化しつつあります.トライボロジーは今まさに,伝統的な工学分野でありながら最先端の科学技術と融合し,新たな発展段階へと進もうとしています.
さらに,カーボンニュートラル社会の実現や持続可能な社会の構築が世界的課題となる中で,トライボロジーの果たす役割はますます重要になっています.摩擦によるエネルギー損失の低減や機械システムの高効率化,長寿命化は,省エネルギーと資源循環の観点から極めて重要です.また,自動車の電動化や再生可能エネルギー利用の拡大,水素社会の実現に向けた新しい材料・潤滑技術の創出など,本分野への期待はこれまで以上に高まっています.私たちトライボロジストが有する知識と技術は,環境・エネルギー問題の解決に直接貢献できるものであり,その社会的責任と使命は今後さらに大きくなるものと考えております.
一方で,学会を取り巻く環境も大きく変化しています.少子高齢化や研究開発環境の変化に伴う会員数の減少,若手研究者・技術者の参画促進,財政基盤の強化など,取り組むべき課題も少なくありません.また,学会活動に対する社会からの期待やニーズも多様化しており,従来の枠組みにとらわれない柔軟な対応が求められています.これらの課題に真摯に向き合いながら,より開かれた学会運営と会員サービスの向上を進め,本学会の持続的な発展につなげていきたいと考えております.
第71期においては,70周年の成果を礎として,次の時代を見据えた学会づくりに取り組みます.DXの推進による運営の効率化と利便性向上,学会誌『トライボロジスト』および国際誌『Tribology Online』を通じた情報発信力の強化,産学官および国際連携のさらなる充実を図るとともに,若手人材の育成と活躍の場の拡大に努めてまいります.また,産業界や社会との接点を広げ,現場の課題解決に貢献できる学会活動を一層推進するとともに,トライボロジーの魅力と重要性を広く社会に発信していきたいと考えております.
70周年を経て,本学会は新たな一歩を踏み出しました.先人が築かれた伝統と実績を受け継ぎながら,変化する社会の要請に応え,新たな知の創造と技術革新を牽引する学会であり続けたいと考えております.会員の皆様とともに,本学会のさらなる発展に向けて歩んでまいりますので,今後ともご支援,ご協力を賜りますようお願い申し上げます.
